7月8・9・10日、ヴェンチュラで開催されたドッグショーに12歳のジュニアハンドラーがコロラドから一人でカリフォルニアに武者修行に来ました。
この女の子はサイトで紹介しているレイ。
パートナーのホク(美佗の子)はコートコンディションが良くない、ということでジュニアハンドリングコンペティションにはホクの子のネオを引く予定でありました。
うちからヴェンチュラまでは3時間半くらいかかるのでレイはショーの前日からL.Aに住むネオのオーナーLさん宅に滞在、そしてホクはレイがカリフォルニアに来る2日前に単身赴任(交配という仕事のため)でうちに来たのです。
ショーの前日、私はLさん宅でレイに甘えるネオを見て大丈夫(クラス1stは取れる)だろうと思った。
もちろんレイはホクと一緒にリングに出たいと思っているのは十分承知している、そしてホクもショーに出せないようなコートではなかったのでさっさとうちでの仕事を済ませて連れてきてあげられれば・・・と思っていた。
・・・だが、仕事は思うようにはいかなかった。
ホクおぼっちゃまはすっかりバケーション気分、犬よりも人間に甘えるばかりでうちの二匹のヒート犬には鼻も掛けないほど無視。
私に甘えてくるのは嬉しいが「あなたはお仕事に来たのだから」と最小限に相手をして「後はお若いお二人で・・・」とまるで私はお見合いの紹介人(笑
1日2日3日目・・・なんとホクはバケーションどころか仕事をしたがるうちの犬を前にしながらだんだん廃人(犬)になってきた。
個室のお若いお二人はお互い背中を向け、ホクは無表情で一点を見つめている。
4日目も進展は無し、餌も食べなくなってきた、廃人ぶりに磨きがかかっている、折角飛行機に乗ってカリフォルニアまで来たのに何もしないでコロラド(帰りはレイと一緒に飛行機に乗る)に帰るのか・・・
虚しい、あまりにも虚し過ぎる。交配ができないのならせめてレイと一緒にショーに出させてあげようか・・・悩む。
ヴェンチュラでの1日目のジュニアハンドリングコンペティションが終わり、電話口で
「ネオは全然言うことをきいてくれなかった」とがっかりのレイ。
大丈夫だろうという私の予想ははずれてしまった。
少し黙って・・・
「ホク引きたいでしょ?」と聞くと
「でも、ホクは・・・」
引きたいけど引くことはできない自分の気持ちを抑えている12歳の女の子の言葉を聞いた時、私は即、ホクのオーナーでレイの母のYさんに
「ホク、明日レイのところに連れて行くよ」
と電話を入れた。
うちはいい、ホクの子はYさんところで生まれたら譲ってもらうこともできる。
でもウェストミンスターを目指すレイは今回の武者修行でポイントを取らなければならない。
ホクは私と娘と二人で念入りにシャンプー、爪切り、歯磨きをされ、今まで小食だった分をどうにか食べさせてショー準備完了、その夜Lさんに早朝ホクを届ける連絡をした。
ホクが家に来て5日目、ヴェンチュラのショー2日目の早朝。
出掛ける前にバックヤードにホクを出し、念のためヒート犬も放して出発の準備をしながらふとバックヤードを見ると・・・
なんとなんとなんと!ホクはすぐさま仕事を果たしてくれたのである。
これで心置きなくホクを送り出すことができる、車のハンドルが軽い、ハイウェイもスイスイ、気温も涼しくて爽快だ。
レイと会えたホクはおぼっちゃまからベィビーの顔に変わった。(笑
「Here's one happy kid and a happy dog.」とLさんは笑顔で言った
ホクとなら絶対勝てるさ!
そしてこの日はクラス3rdを取った。22人の中の3番である。
そうそう、ネオはブリードコンペティションにも出ていて連日リザーブを獲得、Lさんは父さんの柴も出していてこの日はウィナードッグでメジャーポイントを取ったのだ。
さぁ~、これで最終日の明日への足がかりができた。
そしてそして、
最終日の今日(正確にはもう昨日になってしまった)、ブリードコンペティションが終わった午前中にYさんから電話があった。
「もしもし・・・」
「もしもし、あ、どうしたの?」
「あのさ・・・」
泣き出してしゃべれないYさん。
「何?いったいどうしたのさ」
誰か死んだか?とショックを受けないように最悪のシュチュエーションを考える私(笑
「ネオが、ネオが・・・フィニッシュしたのよぉ」
(フィニッシュとはチャンピオンになったこと)
「しかもレイが引いたのよぉ」
最後のメジャーポイントがなかなか取れなくてがんばっていたLさん、それを一生懸命応援していたネオのブリーダーのYさん、ネオをメジャーどころかベストオブブリードにしてフィニッシュさせたレイ。
Yさんはもう感動の涙でいっぱい、私はホクがフィニッシュした時とだぶって気持ちが十分わかった。
昼過ぎ、ジュニアハンドリングコンペティションとネオが出るグループコンペティションが終わっても連絡はこなかったが、この調子なら絶対にレイはやらかしてくれる、と私は何気なく確信していたのだった。
ショーが全部終わっただろうな、と言うときにまたまたYさんから電話がきた。
なんとネオがグループ3rdを取った。
「で、誰がハンドリングしたの?」
「あ・・・レイが電話してきたんだけど聞くの忘れた」
「ははは、それさ、きっとレイが引いたんだよ」
「え、なんで?Lさんでしょ?」
「いいや、レイだよ」
(後でレイに電話して聞いたらやっぱりそうだった)
ホクはグループ4th、ネオの兄弟のハヤトもブループ4th(プロハンが引いて・笑)を取っている。
でも、ネオは3rdを取った。
すごい快挙である。
「で、ジュニアのほうはどうだったのさ?」
レイとホクはベストオブジュニアを取ったのだった。
「ははは、そうなるのわかってたよ」
「え?なんで、わかってたって何か裏で細工したの?」
「ひゃはは、そんなんじゃないよ、レイなら絶対やってくれるって信じてたってこと」
「てっきりジュニアで何も取れなくて連絡してこなかったんだと思ってた」
「私はクラスで勝ってベストオブジュニアのリングの結果が出るまで連絡してこないって思ってたよ」
私の何気ない確信は見事的中だ。(笑
こんな快挙を成し遂げ、ウェストミンスターにまた一歩近づいた12歳の女の子は電話口で淡々と言葉少なにショーの報告をするのであった。
しまった、美佗もフィニッシュしてもらう約束するのを忘れた~(笑
6日間のうち後半の出来事はとても感動的だった。
今頃はレイもホクもコロラドに帰ってぐっすり寝ていることでしょう。